東京高等裁判所 平成8年(ネ)4408号・平8年(ネ)4577号・平8年(ネ)4588号 判決
事実及び理由
第四 争点に対する判断
次のとおり付け加えるほか、原判決「事実及び理由」中の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決書三六頁末行目の「七〇」を「 」に改め、同三七頁三行目の「争いのない事実」の次に「と弁論の全趣旨」を加え、同頁八行目から同頁九行目にかけての「大井埠頭派出所」から同頁一〇行目の「走る、」までを削り、同頁末行目から同三八頁一行目にかけての「その管理者は、東京都港湾局開発部南部埋立地管理事務所である。」を「一審被告東京都においてその管理事務を担当していた部署は、東京都港湾局開発部及びその出先機関である東京都南部埋立地管理事務所である。」に改め、同頁五行目の「バース」の次に「(第一号バースないし第八号バース)」を、同四二頁八行目の「長く、」の次に「他のバース入口から続く同様の」を、同四四頁五行目の「追突させた」の次に「(なお、一審被告東京都は、第三車線を進行していた山岸車が本件事故地点直前のカーブを直進しそのまま第四車線に入って(あるいはさらに第五車線に入りそうな状態になって左側にハンドルを切り)後藤車と衝突したものである旨主張するが、スリップ、車体後部の回転等の痕跡がないこと、〔証拠略〕により認められる衝突後の両車両の位置、態勢及び損壊状況、衝突による後藤車の移動状況並びに山岸車の部品の散逸方向及び散逸距離からして、第四車線を走行中にやや左にハンドルを切った状態で衝突したと見るべきであり、右主張は採用できない。)」を、それぞれ加え、同四六頁五行目の「多かった」を「多く、本件道路においては、各バースから長い駐車列が形成された後、本件事故現場側の第四、第五車線にそのような駐車列ができることが多かった」に改め、同四八頁一〇行目、同五二頁五行目の各「東京都開発局南部埋立地管理事務所」を「東京都南部埋立地管理事務所」に改める。
二 同五四頁末行目の「センターライン」を「中央分離帯」に改め、同五七頁四行目の末尾の次に行を改めた上、次のとおり加える。
「一審被告新朝日トレーラーは、訴外後藤及び同一審被告に対して第四車線に台切りする方法以外の措置を期待することは不可能であった旨主張するが、同一審被告の主張する理由は、単なる経済的理由にすぎず、それによって違法駐車を正当化する余地がないばかりか、仮に順番確保のために駐車しなければならなかったとしても、そのような事由は、無灯火となる台切りをしたことを正当化するものではない。また、法定の反射板がついていれば本件シャーシを無灯火のまま第四車線に放置しても交通の危険がないとすることができないことは明らかである。」
三 同五八頁六行目の末尾の次に行を改めた上、次のとおり加え、同頁一〇行目の「東京都開発局南部埋立地管理事務所」を「東京都南部埋立地管理事務所」に改める。
「なお、各バースの管理者が駐車列を定めるに当たり、関連するバース間で相互に連絡を取り合って駐車列を定めた可能性は否定できないが、そのことや各バース内のブースに駐車列を示す図面が掲示されていたことから一審被告一二社が駐車列の取決めに関与したとまで推認することはできない。また、仮に一審被告一二社の車両も順番確保のために違法駐車をしていたとしても、そのことから一審被告一二社が駐車列を取り決めたと推認することもできない。」
四 同五九頁六行目の「それぞれ」の次に「各バース入口から」を加え、同頁七行目の「いたのであり」の次に「(ただし、第七バースからの駐車列は、本件事故現場の直近の交差点で対向車線から後方にUターンするようにして第四車線に入り、直近の交差点の手前から後藤車を含め三、四台駐車していたものであり(〔証拠略〕)、本件事故当時、右交差点のさらに前方の第四車線がどのようになっていたかはこれを認めるに足りる証拠はない。)」を加え、同頁九行目の「、数十台」を削り、同六〇頁二行目の「数十台の」を「連なって」に、同頁五行目の「追突事故」を「衝突事故」に、それぞれ改め、同行目から六行目にかけての「現実化していた」の次に「(本件事故と態様は異なるが、夜間違法に駐車していた大型トレーラーに衝突し死亡事故という重大な結果を生じた(〔証拠略〕)という点では、危険性に変わりはない。)」を加え、同行目から七行目にかけての「東京都開発局南部埋立地管理事務所」を「東京都南部埋立地管理事務所」に改める。
五 同六二頁四行目の「取ることなく、」の次に「各バース入口から」を加え、同頁九行目の末尾の次に行を改めた上、次のとおり加える。
「そして、前示の事実によると、右のような状況は、本件道路が大井埠頭内のバースや運送会社の業務施設、JR貨物線等に囲まれていたことから構造的に生じていたものであり、特に各バース入口から各バースごとに決定されていた駐車列に従って翌朝の順番確保のために多数のトレーラーが駐車することに起因しているものと認められる。さらに本件道路の本件事故現場側では各バースとの位置関係から右駐車列が常に第四、第五車線に形成されるようになっていたものであり、前示の事実によると、その駐車列は、バースが閉じられて以降、翌朝までの間に徐々に形成・維持されていたものと認められるのであって、片側五車線の大規模な道路(制限速度五〇キロメートル)の第四、第五車線に夜間無灯火のトレーラーの駐車列が恒常的に形成され、しかも、その最後尾が順次移動するという状況からすれば、これが道路として極めて危険な状況にあることは明らかであり、その危険性は夜間において常態化していたものと認められる。
一審被告東京都は、本件道路は夜間の通行量が極めて少なく、また、夜間通行する者は現場の地理に詳しいものがほとんどである旨主張するが、本件道路は、一般車の通行が許容されている上、幹線道路である環状七号線に繋がる大規模な道路であるから、事情を知らない一般車が通行することを念頭においた安全管理がされなければならないことは明らかである。加えて、夜間の通行が少ない道路となれば、かえって制限速度五〇キロメートルを超えて走行する自動車が少なからずあることは容易に予見できるところであり、また、東京都内の市街地を通行することを常としている自動車に対し本件道路において必ず前照灯を上向きにして走行することを期待するのは相当ではない。したがって、一審被告東京都としては、水上署に対して違法駐車の取締りや運転手、その雇主等に対する行政指導を依頼し、また、みずからも運送事業者等に対する行政指導を行う等してそのような駐車車両を現実に排除し、それが効を奏さないときや、効を奏するまでに日時を要するときには、中央分離帯に街路灯を設置する等して視認環境を改善することにより、後方から走行して来る自動車が夜間でも違法駐車車両を早期に発見できるような措置をとり、あるいは、標識や看板を工夫して、第四、第五車線に違法駐車車両の存在することがあることを一般の運転者に知らせる等の警告措置をとるべきであり(現実問題として困難ではあろうが、工夫の余地がないとはいえない。)、そのような措置がとられ交通の安全が現実に確保されていない以上、本件道路の管理に瑕疵があるといわざるを得ない。
なお、本件道路の歩道上には街路灯があったことは前示のとおりであるが、その明るさは本件事故地点で五・五ルックスであり(〔証拠略〕)、第四車線上での無灯火の駐車車両を早期に発見するための明るさとして十分であったとはいえない(丙第一五号証の1ないし6は白黒の写真であるから、同号証によって人間の目でも当該写真同様に障害物の識別が可能であったとすることはできない。また、〔証拠略〕の本件トレーラーの視認可能状況に関する記載内容を本件事故に当てはめることができないことは後に判示するとおりであり、同号証によっても、本件道路において無灯火の駐車車両を早期に発見することが容易であったと認めることはできない。)。
六 同六三頁八行目の「九時ころ」を「九時過ぎころ」に改め、同六四頁の五行目の「のである」の次に「(なお、亡美由紀が夜間における本件道路の違法駐車の実状を知っていたことを認めるに足りる証拠はない。)」を、同七一頁六行目の「いうべきである」の次に「(本件トレーラー(シャーシー)に反射板がついていたことにより追突の危険がなかったといえないことは明らかであり反射板により本件トレーラーを認識できなかったことは、右に判示した前方不注視において考慮すれば足りる。)」を、それぞれ加え、同七一頁八行目の末尾の次に行を改めた上、次のとおり加える。
「なお、前示の事故態様からして、亡美由紀が第五車線に多数の駐車車両が並んでいるのを認識しながら本件事故地点まで進行したものであることは明らかであるが、亡美由紀は、本件事故地点まで第一車線に一、二台の駐車車両と第五車線の駐車車両を認識しながら走行したものと認められるところ(〔証拠略〕)、そのような状況下においては、違法駐車があっても第一車線と第五車線とにのみあると考えた可能性があり、その場合には、第五車線の駐車車両が駐車列を指定されて駐車しているということを知らない者にとっては、中央分離帯側の第四車線にも駐車列を指定されて二重駐車をする車両があることを予測するのは困難であったといえる。したがって、その点を特に考慮して過失相殺をするのは相当ではない。」
七 同七二頁三行目の「もっとも」から同頁七行目の末尾までを次のとおり改める。
「また、本件事故直前の山岸車内における亡美由紀の運転状況及び亡敏之の助手席での状況を認めるに足りる証拠はないところ、助手席に乗っている者が常に運転者の運転状況を注視しているとはいえないから、山岸車が夜間にしかも五車線ある道路を進行していたことからして、制限速度五〇キロメートルのところを七〇キロメートルを超えて走行したとしても、亡敏之において速度違反を確実に認識していたとまで認めることはできず、また、亡美由紀の前方不注視を知っていたとまで認めることはできない。したがって、亡敏之に対し同乗者として本件事故を避けるための何らかの対応を期待できる状況にあったとするととはできない。そして、亡敏之が亡美由紀と婚約していたという事実は、一審被告らとの関係において過失相殺の事由とすることはできないから、本件事故につき亡敏之に過失相殺をすべき事由があるとすることはできない。」
八 同七二頁七行目の末尾の次に行を改めた上、次のとおり加える。
「(三) ところで、一審被告東京都は、過失相殺においては、営造物の管理責任を負う同一審被告と他の一審被告らとを同一に取り扱うべきではないと主張するが、前示の事実によると、東京都南部埋立地管理事務所では、本件道路の違法駐車の実状とその原因を認識していたものと推認できるし(認識していなかったとすれば重大な過失がある。)、本件の不法行為は、前示のように共同不法行為であるから、被害者との間においては、その態様からして、一審被告らの間に過失相殺率に関し差異を設けるべき事情があるとはいえない。」
九 同七七頁四行目の全文を削除し、五行目の「(6)」を「(5)」に、八行目の「(7)を「(6)」に、同行目の「一二二六万九四七二円」を「一八五七万五四五八円」に、九行目の「(7)」を「(6)」に、一〇行目の「六一三万四七三六円」を「九二八万七七二九円」に、末行の「一二二万円」を「一八六万円」に、同七八頁三行目の「六一万円」を「九三万円」に、五行目、六行目の各「六七四万四七三六円」を「一〇二一万七七二九円」に、それぞれ改める。
第五 結論
以上判示したところによると、一審原告康純及び同朋子の一審被告大二産業、同新朝日トレーラー及び同東京都に対する各請求は、それぞれ不法行為による損害賠償金八四〇万九三八二円及びこれに対する本件事故の日である昭和六二年六月一二日から支払済みに至るまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余はいずれも理由がなく、一審原告進一及び同ヨシ子の一審被告大二産業、同新朝日トレーラー及び同東京都に対する各請求は、それぞれ不法行為による損害賠償金一〇二一万七七二九円及びこれに対する本件事故の日である昭和六二年六月一二日から支払済みに至るまでの民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余はいずれも理由がないことになる。
よって、一審原告進一及び同ヨシ子の控訴に基づき、原判決中、一審被告大二産業、同新朝日トレーラー及び同東京都に係る同一審原告らの敗訴部分を変更し、その余の控訴をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九六条、八九条、九二条本文、九三条一項本文、九四条後段を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 新村正人 裁判官 岡久幸治 北澤章功)